東寺(とうじ)を訪れたのは、澄んだ青空が広がる初秋の朝でした。京都駅から徒歩で向かう道すがら、少しずつその荘厳な姿が近づいてくるにつれて、胸が高鳴るような感覚を覚えました。到着してまず目に飛び込んでくるのが、五重塔。日本一の高さを誇るその木造建築は、まさに京都のシンボルとも言える存在で、遠くから見上げた瞬間に心を奪われました。
境内を歩くと、金堂や講堂、御影堂といった建物が次々に現れ、それぞれに異なる空気感と重みがありました。特に講堂の立体曼荼羅は、仏像ひとつひとつが宇宙の秩序を表しているかのような迫力で、思わず時間を忘れて見入ってしまいました。21体の仏像が静かに佇む空間に身を置いていると、自分自身も世界の一部として整えられていくような感覚に包まれます。
地元の方に教えていただいた弘法市にも運よく遭遇し、骨董や手作りの雑貨に囲まれながら、京都の人々の暮らしと信仰が脈々と息づいていることを肌で感じました。境内に咲く草花や、水面に映る五重塔の姿までもが、どこか神聖で美しい。東寺は、ただ歴史を学ぶだけではなく、自分の心と静かに向き合える場所でした。何度でも訪れたくなる――そんな特別な時間を与えてくれる、京都の大切な場所です。